工作機械に就ての所感
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概要
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工作機械工場の設備をする場合に工作機械關係で注意を要することは、所要の目的通りに品物を作るには何々の機械を幾臺づゝ如何う配置すれば工作工程が流れる様に進むか、又必要な材料、半加工品等の置場が都合よく取わてしかも設備費も維持費も安く採算の取れる程度になるかと云ふ點である。その爲には第一に配置の自由な機械であることが必要である。それには工作機械が電動機に箇別に運轉されて居ることが必要である。次ぎに工作機械の種類と各々の臺數の間題であるがこれは被加工物の種類だけで定めず、工場出來後の工作指導者の經驗を充分に考へねばならぬ。普通の工作機械は段取を加味して考へると使ふ人の經驗と熟練によつて相當に種々な仕事が出來るものである。この事はガタガタの工作機械ででも熟練工人は立派な物を作れるから工作機械は何でもいゝと云ふ意味ではなく、工作機械は工作用原動機に過ぎぬと云ふ意味である。この意味に於て工作機械は充分な力と信頼出來る正確度を絶對に必要とする。値段は安いに越した事はないが切削工具の進歩には伴つて居なければならぬ。炭素鋼刄物時代の工作機械では高速度鋼刄物に充分な威力を發揮させることが出來ぬ様に高速度刄物用の工作機械ではタングステン・カーバイト刄物を完全に使用する事は困難である。(勿論炭素鋼刄物時代の工作機械に高速度鋼刄物を使用しても相當の効果が見られる程度には高速度鋼刄物用工作機械にタングステン・カーバイト刄物を使用しても効果は見られる。)刄物の進歩に伴つた機械は相當に高價になるに相違ないが工作機械は直接工場原價と其の機械自身の償却費だけの仕事をする物で無く他に利益をも生み出して居るものである以上幾分でも工作速度が増せるなら相當に高價になつても採算が取れる筈である。
- 社団法人日本機械学会の論文