アレルギー性血管炎の成り立ちに関するI^131を利用しての実験病理学的観察
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概要
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血管病変は種々の角度から問題とされるが, 著者はアレルギー性血管炎, 結節性動脈周囲炎と呼ばれる両者の病変のカテゴリーが不明瞭である点に着目し, 発生原因的立場から血管炎の分類を再検討すべきと考えたので, 異種血清による感作機作にアイソトープを応用して実験を行った.その結果, 実際に惹起し得た血管炎の型態を総括的に吟味し, その形態発生をとらえた.更にペニシリン, コーチゾン, サイアジン等の薬剤を感作ウサギに用い, これらの共働によるアレルギー性血管病変の発生の有無を検した.1)大量ウマ全血清2回静注法により, 多数のウサギの心臓に"定型的アレルギー性血管炎"を発生せしめ, 同時にアイソトープ術式を用い惹起後20時間より33日目迄経時的に型態発生を観察した.2)組織学的に血管病変は心臓に局在し, すべての太さの血管に認められた.惹起注射後第3日目以後の標本では, 同一切片上に種々の型, 強さ, 又種々の時期のものが見られた.その典型的病変は人の結節性動脈周囲炎に酷似していた.3)本実験のアレルギー性血管炎は, Zeekが非アレルギー実験で発生せしめたPN病変とは形態的に殆ど区別出来ない.たゞ相違点は, 著者の得たアレルギー性血管炎の分布は心臓のみで, 病変完成迄の時間がZeekのより早く, 血管壁周囲の定型的線維芽細胞増殖は欠如し, 動脈瘤形成がなかったことである.4)実験動物中の惹起抗原分布をI^131を用いて追跡した.心臓に於ける放射能値は他臓器に比してはそれほど上まわっていなかったが, 対照に比しては約3倍の値を示した.5)ミクロオートラジオグラフを用いての組織内抗原の追求により, 早期病変を示す血管の中膜外側から外膜内側にかけてI^131標識抗原の存在を認めた.従つて此の場合の血管周囲の炎症は中膜病変に対する単なる修復性反応ではなく, 傷害因子に対する直接反応を示すものと考えられる.6)異種血清感作ウサギにサイアジン, コーチゾン, ペニシリン等の薬剤を注射することにより血管病変を惹起したが, 一般に内膜肥厚を主変化とする軽微なものであり, たゞ惹起物質としての大量のペニシリンを投与した際に感作ウサギにも明らかな血管炎を発生せしめた.
- 社団法人日本アレルギー学会の論文