慢性肝疾患における肝細胞障害の免疫学的機序に関する研究
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概要
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慢性肝疾患における肝細胞障害機構を体液性抗体および細胞性免疫の両面から検討した.体液性抗体は, 抗肝細胞膜抗体につき検討し, 遊離ラット肝細胞, ヒト赤血球(O型Rh+ve)およびヒト補体(AB型Rh+ve)を用いた免疫粘着現象で行った.細胞性免疫は, 末梢血T細胞とB細胞の比率および剖検時にえられたヒト肝ホモジネート上清に対するマクロファージ遊走阻止試験につき検討した.その結果, 慢性肝炎活動型では健常対照群に比較してT細胞比率は減少し, B細胞比率は増加した.また, 抗肝細胞膜抗体は, 慢性肝炎の80%に陽性で, マクロファージ遊走阻止も慢性肝炎活動型の72%に認められた.一方, 末梢血より分離したリンパ球は, 抗肝細胞膜抗体を作用させた遊離ラット肝細胞および抗肝細胞膜抗体とともにヒト補体を作用させた肝細胞とロゼット状に結合することを認めた.そして, そのさい"ロゼット形成細胞"の出現率は, 前者で8%, 後者で16%であった.以上の結果より, 慢性活動性肝炎における肝細胞障害は, 抗肝細胞膜抗体や補体やリンパ球が肝細胞膜に結合することによってひきおこされると考えられる免疫学的機序がもとで持続していくものと推測された.
- 1976-05-30