儀礼・職能カースト・女性 : 北インド農村における通過儀礼と吉・凶の観念
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概要
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本稿は,北インド農村の通過儀礼における吉・凶の観念とそれにかかわる職能カーストや女性の役割を考察することを目的としている。調査地の通過儀礼では,凶をもたらす原因となる悪霊の危険性が強く認識され,凶を除去し,吉を促進する儀礼がおこなわれる。ブラーマン司祭は,吉なる日時の設定やダーン(儀礼的贈与)の授受による凶の除去という吉・凶の観念とかかわる重要な役割をはたす。下位の職能カーストの女性も,不浄の除去にとどまらず,悪霊の攻撃をふせぎ,凶を除去し,さらに吉とかかわる。また,一般の女性も,集団で歌をうたい,踊りをおどる儀礼的諸行為をつうじて吉をもたらす。女性と吉との結びつきには豊饒性とのかかわりがみられる。このような点から,清浄なブラーマンに凶との結びつき,不浄な下位の職能カーストや女性に吉との結びつきがみられ,ヒエラルキーの上下身分と価値が対応していないことがあきらかとなった。
- 日本文化人類学会の論文
- 1991-09-30