対峙する神々 : 宗教的職能者間の対立と共存をめぐる一考察
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概要
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本稿の目的は,沖縄本島北部一農村における調査事例をもとに,民俗社会における宗教的職能者間の対立,共存の諸相を考察することにある。沖縄の民俗宗教を担う職能者は村落祭祀を司るノロと個人的要求に基づく私的領域を扱うユタとに代表される。ところが,沖縄を含めた南西諸島における職能者の研究を振り返ると,両者は同一集落,地域に共存しながらも個別に扱われ,相違のみが強調される傾向にあった。しかし,調査地の職能者を見た場合,ノロもユタもその出所並びに憑依の具現化という点からしても同一の基盤の上に存在しており,両者を峻別する指標は従来の基準では不十分であることが明らかとなった。更にノロ対ユタ,ユタ対ユタの対立も展開されており,もはや両者を個別に扱うことの有効性はなくなっている。こうした対立は様々な社会変化に伴なう民俗社会の動揺や「門中化」とよばれる出自集団形成の論理にその要因を求めることは可能である。ただ,本稿ではそうしたことを念頭に置きつつも職能者の知識の有様にも着目し,その質の違い,変遷を通して本題の考察を進めていくものである。
- 日本文化人類学会の論文
- 1992-03-30
著者
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