日本産内肝動物に関する研究 : IV 1新種Loxasoma vatilli sp. nov.とその二型性について
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概要
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1972年1月にテリメンイトゴカイと一緒にその棲管の中からLoxoxomaの1種を,更に6月には前種と一緒にテリメンイトゴカイの体長に付着するLoxoxomaをを採集した。両者は萼部の有柄吸盤の有無,柄部の発達の違い,および習性の違いからそれぞれ独立した種と思われた。その後,詳細な観察から基本的形態は萼部吸盤を除くと両者ともほとんど同じであること,さらに相互に類似した習礼・行動を示す事がわかった。また,その後の採集で,それぞれの中から両者の中間の形態をした個体が度々見つけられた。これらの事実から,それぞれを独立した種とすることに疑問が生じた。その疑問解明のために,数回の飼育実験を行ない,その結果,両者の形態の相違は出芽個体が共生主のゴカイの体表に付着した状態で形成・生長したか否かによって決まることが判明した。すなわち,ゴカイの体表に付着したままの状態で出芽・生長した個体となり,萼部に有柄吸盤を有する個体となり,そうでない場合は,萼部に吸盤有せず,発達したする柄部を持つ個体となる。ここに,二型性を有する新種,Loxosoma vatilliとして報告する。Urnatella indicaに近い。個虫は基物に付着する底盤,ビーズ状の節からなる茎,触手をもつ萼虫の三部分に分けられる。底盤は紡錘形で,隔壁により2〜3室に分かれ,各分節から一本の茎が立つ。すなわち,一つの底盤から2〜3個の個虫が生じて一つの群体をなす。茎は4〜6個の筋肉節から成り,最高15節であった。萼虫は透きとおっており,内臓が観察できた。肛門は触手冠内の前庭に開口している。夏季,出芽による無性生殖がよくみられるが,有性生殖はみられなかった。10月には萼虫は脱落し,茎と底盤が残る。これらは,栄養を蓄えて越冬し,5月には発芽する。
- 1977-10-31