ヒラハコケムシの付着後成長
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
昨年,ヒラハコケムシのキフォナウテス幼生の形態およびその成長を記載したが,その後キフォナウテス幼生示指藻上に付着したいわゆる"付着幼生"を内浦湾から採集した。今回はその付着幼生の形態を記し,それが"双室性初虫"に変態する過程およびその後の群体形成を観察した。付着幼生は上面から見ると楕円形で扁平た細胞塊であり,その上を互に一部示重なりあった2枚の透明な殼でおおわれている。このような基本的な構造は以前に記載されているM. villosaおよびM. membranaceaの付着幼生と変わりはない。付着体の2枚の殼は遊泳時のヒラハコケムシのキフォナウテス幼生の殼と明らかに一致するが,付着時に形成されたと思われる2つの新しい形態が見られた。付着後の変態はM. villosaとほとんど同じである。また,双室性初虫をかこむ周辺個虫芽,第一個虫およびそれらの棘の数もM. villosaとの間に基本的な差は見られなかった。群体形成過程においては,特徴的な退化個虫群の散在,虫室脱落部への変則的な出芽などが観察された。M. menbranaceaで知られている"orientated growth"はヒラハコケムシでは観察されず,群体は基本的には全周へ向って生長するためほぼ円形となる。
- 日本動物分類学会の論文
著者
関連論文
- ヒラハコケムシの付着後成長
- 10.ヒラハコケムシ(Membranipora serrilamella)の生活史(動物分類学会第9回大会講演要旨)
- 相模湾産コケムシ動物の研究の現状 : 130年間で得られた膨大な標本から何が明らかとなるのか?