真空管外殻用セラミック
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概要
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真空管の外殼 (外囲器) には, 一般にもっぱらガラスが使われている. ガラスは一般に (1) 加工が楽である, (2) 封着が容易である, (3) 内部が透視出来る, (4) 絶縁がよい, (5) 価格が安い, (6) 気密である等の理由で始めから真空管や電球に用いられて来たが, まだまだその用途は絶えないのみか, 将来とも大いに用いられることであろう. しかしガラスにはまた (1) 脆弱で破損し易い, (2) 高温度に使用出来ない, (3) 高周波では絶縁がよくない, (4) 熱の急変に対して弱い等の欠点があるために一時的の現象ではあったが, 金属真空管というのが現われ, 真空管が大いに小形化され, Tin Can Tubeなど量産的のものも現われ受信管がすべて金属管になるのではないかとさえ思われた. 金属管によって強度は改良されたが, 高周波用には限度があり不選当なことが判って来たので, 高周波の世界からはだんだん忘れ去られ, 真空管の構造, 材料の研究, 発達により再びガラス管時代となり, 今日ではガラスで極めて小形のサブミネチュア管等が容易に作られるようになった. そしてさらに高度の負荷と, 高周波に対してはセラミック以外に求めるものがなくなった. セラミックが真空管の構造材料として用いられ始めたのは40年も前になるが, 真空管の外殻としても既に20年前には試作が行われている. 両者とも, ドイツで始められた技術であった. 戦後アメリカで完成したセラミック真空管も実はこの技術に学んだものである. われわれが7ケ年の歳月をかけて試作完成したセラミック真空管も大いにこれらを参考とした.セラミックがガラスに比して如何なる特徴を持つかといえば, (1) 耐熱性が優れている, (2) 機械的の強度が大である, (3) 高周波特性がよい, (4) 成形正度が大である, (5) 熱の急変に対して強い等列挙される. しかしセラミックにも種々あり, しかもガラスと異なり焼成収縮という現象があるために成形, 焼成にはガラス工業にない一つの技術が必要である. しかしある程度機械的強度が大なるため研磨仕上げが容易である. これらはセラミックの技術者にとっては常識である. そこでセラミック真空管の技術は第1がセラミックの選択, 第2は金属の選択, 第3はセラミックと金属の封着の技術となるが, さらに大切なことは真空管の設計と構造である. これによって第1, 第2, 第3の事項が順次決定して来る. これらについて述べて見たいと思う.
- 1957-10-01