凍結保存精子の受精機能に関する研究
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概要
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精子の凍結保存は既に臨床応用されているが, 融解後の受精機能に関しては充分な評価が成されていない. 今回, 凍結融解前後の精子機能を受精現象と結び付けて評価し, 凍結保存による受精能を検討した. 対象は, 正常及び不妊症患者の計214例とし, 採取された精液は一般精液検査後, 1) Bovine cervical Mucus Penetration test (BMP test), 2) Hamster test (ZSPT), 3) Triple stain法 (AR test), 4) Hypoosmotic Swelling test (HOS test), 5) 精子自動解析装置, にて精子機能を評価した. 凍結保存は, KS-II液を使用し, Program freezerにより凍結後,液体窒素中に保存した. すべての精液は融解後蘇生率を算出し, 凍結前と同様に精子機能を評価した. なお,対象は精子濃度により, A. 20×10^6/ml未満, B. 20〜40×10^6ml, C. 40×10^6/ml以上の3群に分類した. 1) 融解後の平均蘇生率は, A, B群がC群より低い傾向を認めた. 2) 融解後の BMP test検査における最高到達距離は, A群において有意に低下していた. 3) Hamster testによる侵入率では, B, C群は凍結前後に差はなかつた. しかし, 融解後のA群は, 有意に低い結果を得た. 4) HOS testでは, 凍結前後の各群で G-type膨化率, 総膨化率に有意な差は認められなかつた. 5) Triple stain法では, 凍結後のAcrosoma Reaction (AR)率はやや高い傾向を示すが, 凍結前後に有意な差はなかつた. 6) 精子自動解析装置では, LHD以外のパラメーターは凍結後低下していたが, 受精能は保持されていることが推測された. 以上の結果より, A群では凍結により機能面での脆弱性が増し, 受精能が低下することが判明した. したがつて乏精子症では, 凍結融解の臨床応用が困難であることが示唆された. 正常者では, 凍結融解により臨床応用が充分可能であることが本研究により明らかとなつた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1991-09-01
著者
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