子宮体癌の進行度評価におけるMagnetic Resonance Imaging(MRI)の意義
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概要
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子宮体癌において癌の筋層浸潤程度および頚管侵入の有無は組織分化度などとともに予後を左右する重要な因子である. したがってこれを治療前により正確に把握することは適切な治療法の選択, ひいては予後の改善に寄与するものと考えられる. 本研究では Magnetic Resonance Imaging (MRI) の体癌進行度評価における意義を明らかにするため, 20例の体癌症例について MRI 所見と病理組織学的所見の詳細な比較検討を行い, 以下の成績を得た. (1) 残存子宮体部筋層の厚さの最小値の MRI 上の計測値と組織標本上の実測値との間には r=0.8608 (p < 0.001) で有意な正の相関が認められた. (2) 四つのパラメーターを設定し, 対象を, (1) 矢状断像における子宮陰影内の high intensity area の占拠面積 (HIA-Sa)50%以下, (2) 横断像における子宮陰影内の high intensity area の占拠面積(HIA-Tr)50%以下, (3) 正常子宮筋層の厚さの最小値0.5cm以上, (4) 正常子宮筋層の厚さの最大値最小値比0.5以上の4条件を満たす境界値以下群 (以下群) とこれを満たさない境界値以上群 (以上群) の2群に分け, 病理組織学的に確認された癌の進行度と比較検討した. 厚さの1/3を越える筋層浸潤は6例の以下群では1例もなかったのに対し, 以上群では14例中12例 (86%) と有意に高頻度に見られた (p < 0.01). また以上群では筋層内脈管侵襲が5例に, 子宮外蔓延が2例に指摘されたが, 以下群には1例も認められなかった. (3) Junctional zone は20例中10例で描出されており, intact であった2例では癌は内膜に留まっていた. また他の8例ではその断裂部位と癌の筋層浸潤部位は一致していた. (4) MRIによる癌の頚管侵入の有無の評価については sensitivity 0.71, specificity 0.92, accuracy 0.85であった. 以上より MRI は体癌進行度評価において従来にない高い精度を有し, 治療法の選択に極めて有用な検査法であるとの結論を得た.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1991-01-01