悪性卵巣腫瘍の拡がりに対する術前X線CTの役割
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概要
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悪性卵巣腫瘍の管理において初回手術での腫瘍摘出の完遂度は, その後の化学療法の奏効率や予後に大きな影響を与える. したがって術前に腹腔内における癌の浸潤転移を可能な限り正確に把握することは個々の患者に適切な手術を行い予後の改善をはかっていくうえで極めて重要であると考えられる. 近年の画像診断法の進歩は卵巣腫瘍の術前診断に大きく貢献しているが, この点における CT の意義はいまだ確立されているとは言い難い. そこで, 術前に癌の拡がりを把握し適切な治療計画を立てるうえでの CT の有用性を検討するために, CTによる stage の推定と, 成し得た手術について比較検討した. 対象は当科で初回治療を行った悪性卵巣腫瘍のうち治療前に CT が施行され, 手術病理学的に臨床進行期が確定された89例である. その CT 所見と手術所見を比較検討し以下の結果を得た. 1. CTによる腫瘍の拡がりの正診率は腫瘍卵巣外表発育79.8%, 対側卵巣転移77.6%, 腹水79.8%であり, 他臓器への転移に関しては子宮78.2%, 腹膜68.2%, 腸管77.0%, 大網79.3%であった. 2. CTによって推定された stage と surgical stage の一致率は64.0%であり CT stage が surgical stage よりも under staging であった症例は23例, over staging であった症例は9例であった. 3. CT stage と手術の完遂度との関係を検討すると, 腫瘍完全摘出あるいは両側付属器, 子宮および大網切除を施行し得た症例はI期33例中31例(93.9%), II期28例中21例 (75.0%), III期28例中11例 (39.3%) であり, CT staging でIII期以上の場合に手術完遂度は著しく低下した. 以上より CT による staging は underestimate となる傾向があるが, 手術完遂度を予測するうえで有用であり, 卵果癌の管理に大きく寄与すると考えられた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1991-01-01