ヒト卵管組織内sex steroids, prostaglandinsおよびoxytocin receptorsの月経周期における推移
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概要
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ヒトの排卵・受精・着床という生殖現象において, 卵管内における一連の過程はいずれも内分泌因子依存性のものであり, とりわけその組織内濃度が影響するものと考えられている. そこで性 steroids, prostaglandins (PGs)と oxytocin (OT) それぞれの receptor (R)動態から検討し, 以下の成績を得た. 1) 月経周期における nuclear estradiol-, progesterone R (ERN, PRN)の結合部位数 (NBS)はそれぞれ平均1.0〜5.0, 0.5〜2.5p mol/mg DNAの間で推移し, 量的にERNは膨大部>峡部, PRN は膨大部≒峡部であり, 排卵期で一様に増加するが, ことに膨大部のERNで著しい. ついで分泌中期に減少するが, PRNはなお増殖期のそれより高値となつている. 2) PGE_2-, PGF_<2^α>-RのNBSは峡部 : 1.2〜3.9, 膨大部 : 1.0〜3.6fmol/mg proteinの間で推移し, PGE_2-Rはいずれの時期においても峡部>膨大部となり排卵期以降増加し分泌期に最も高値となるが, この推移はことに峡部で著しい. 一方, PGF_<2^α>-Rは峡部においてPGE_2-R同様の推移をとるが, 膨大部においてはこの間むしろ減少している. 3) 組織中6-keto-PGF_<1^α>濃度は平均0.6〜3.9ng/mg total proteinの間で推移し, 排卵期には対照的に峡部で著増し, 逆に膨大部で有意の低値となつている. 4) OT-RのNBSは峡部: 4.2〜9.8,膨大部:2.0〜3.2fmol/mgproteinの間で推移し, 峡部では排卵期以降増加し分泌期に最も高値となるが, 膨大部では月経周期に伴う変動に有意の差がない. 以上の成績より, 性steroidsは膨大部に, PGsとOTは逆に峡部により強く集積することになるが, これらreceptorの動態は卵管の生理的機能や形態学的な変化と合目的に極めてよく相関している. したがつて, 卵巣一局所循環体液や粘膜上皮に由来すると考えられる内分泌因子に呼応したこれらの受容体機構が, 卵管内で行われる一連の生物学的な生殖過程の調節機序に深く係わつているものと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1988-09-01
著者
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