妊娠・分娩時の母体血中corticosterone及びcortisolの変動
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概要
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妊娠及び分娩時の母体副腎皮質機能を検討するため,6人の正常妊婦の血清corticosterone及びcortisol濃度を,妊娠初期から分娩後までほば4週毎に調べた.測定にはhigh-performance liquid chromatography (HPLC)を用いた.妊娠6〜13週のcorticosteroneは3.0±2.2ng/ml(mean±S.D.)とほぼ正常範囲内にあつたが,14〜26週5.4±3.5ng/ml,27〜40週7.7±2.2ng/mlと上昇し,児娩出直後には63.9±27.lng/mlとcortisolの正常濃度範囲近くまで上昇した. この値は陣痛発来後入院時の6.3倍に当たる.分娩後5日には9.2±5.7ng/mlと低下した.cortisolは,妊娠6〜13週で132.4±46.4ng/mlとほぼ正常範囲内にあつたが, 14〜26週には253.2±97.9ng/mlとなり,27〜40週には350.3±64.8ng/mlと上昇した.児娩出直後には866.7±177.4ng/mlと陣痛発来後入院時の2倍以上に急増し,分娩後5日にほ355.8±91.2ng/mlとほぼ27〜40週の値に戻つた血清corticosteroneの濃度変化は全期間を通じてcortisolのそれに良く似ていたが,妊娠時のcorticosterone/cortisolが0.021±0.009〜0.022±0.005と一定の値を示したのに対し,児娩出直後のそれほ0.072±0.021と陣痛時に比し有意に(p<0.001)高くなつた.分娩時には母体血中ACTHの増加が見られることから,児娩出時のcorticosterone/cortisolの上昇は,増加したACTHに対する両ホルモンの分泌機序の差によるものと考えられる. Insulinで誘導した低血糖ストレスに対してcorticosterone/cortisolが上昇することから,児娩出直後の母体副腎皮質機能の冗進は,分娩時のストレスによるものであり,妊娠時の両ホルモンの内分泌動態とは明確に区別されることが明らかになつた.
- 1988-01-01