妊娠・分娩時の子宮筋における(Ca^<2+>-Mg^<2+>)-, actomyosin-ATPase活性とcalmodulinによる調節
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
妊娠時の子宮筋収縮・弛緩の調節に係わるとされる(Ca^<2+>-Mg^<2+>)-ATPase活性、actomyosin(ACT)-ATPase活性及び超沈澱の3者の動態と相互関係とを、それらに対するCa^<2+>結合蛋白calmodulin(CMD)による影響を中心に検討し、以下の成績を得た。1)卵巣摘出ラットの子宮筋における(Ca^<2+>-Mg^<2+>)-ATPase活性はestradiol投与によって12.0±20.1→132.5±22.8nmolePi/mg/minと上昇し(n=5、p<0.01)、また妊娠第19、20、21及び22日ラットでそれぞれ48.0±5.0、48.2±7.5、112.3±18.5及び27.3±8.8となり、分娩直前ピークとなる(p<0.05)ことを認めた。2)ヒト妊娠初期並びに末期陣痛発来前・後の子宮筋(Ca^<2+>-Mg^<2+>)-ATPase活性はそれぞれ95.4±13.8、85.1±2.9、79.4±9.8nmolePi/mg/minとなり相違がないが、CMD存在下においては陣痛発来後のそれのみが濃度依存性に抑制されることを認めた。3)ACT-ATPase活性はCMD添加によってそれぞれ295→1、134、550→1、243、897→4、735pmolePi/mg/minとなり、妊娠・分娩いずれの時期においても著しく(p<0.05)亢進した。4)分娩開始直前の家兎子宮筋から調整したACTによる超沈澱法では、CMD添加によってそれの重合体形成の加速、強度の増加を認めた。5)子宮筋組織中のCMD濃度は妊娠初期、末期陣痛発来前・後のいずれにおいても相違がなかった。以上の成績から、CMD作用は妊娠初期の子宮筋では筋細胞内のCa^<2+>汲み出し機構を刺激して筋弛緩に、妊娠末期の子宮筋ではそれを抑制すると共にacthmyosin間の"滑り"を活性化して筋収縮に、それぞれ指向することになる。従ってCMD作用は妊娠時期によって子宮筋の収縮・弛緩に対しそれぞれ異なった機能を有しているものと思われる。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1986-07-01
著者
関連論文
- 95. 子宮収縮機構内におけるプロスタグランディンの新しい作用機序に関する検討
- 妊娠・分娩時の子宮筋における(Ca^-Mg^)-, actomyosin-ATPase活性とcalmodulinによる調節
- 73. ヒト分娩期における子宮筋Ca^-Mg^・ATP aseとmyosin light chain kinase活性の推移 : 第13群 妊娠・分娩・産褥 V
- 24. 病態別妊娠中毒症におけるprostaglandin E_2/renin-angiotensin系とprostaglandin I_2/thromboxane A_2/vasopressin系の動態とその意義 : 第4群 妊娠・分娩・産褥 IV (20〜25)
- 腹腔鏡下に修復できた腸管損傷の1例 : 偶発合併症における手術のビデオ記録の意義