円錐切除後の残存子宮における病巣遺残の判定について
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概要
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子宮頚部初期癌性病変を有し円錐切除後子宮を摘出した77例の円錐切除組織標本と摘出子宮標本を検討し、円錐切除後の病巣遺残判定の組織学的基準を設けることを試みた。検討項目は、切除片の大きさ、病巣を有するブロック数、切除断端から病巣までの距離、病巣の頚管縦軸方向の長さ、表層基底膜からの深さ、腺腔侵襲の有無、病変進行度等である。これらの検討により、1)円切断端から病変までの距離、切除辺の長さ、腺腔侵襲の有無、病変進行度におけるinvasiveの有無において、病巣遺残(+)及び(一)例の間に有意の差を認めた。中でも特に円切断端から病巣までの距離が重要であった。2)円切断端から病変までの距離が3.1mmを超える場合には97.5%の確率で病巣遺残(-)であり、更にこれに病巣の長さ8.5mm以内という条件を加えるとより確実に病巣遺残(-)例を選択し得る結果を得た。3)円切断端から病巣までの距離が3.1mm未満でしかも断端に病変を認知・場合には、腺腔侵襲の有無及び病変の頚管縦軸方向の長さが遺残の有無に大きく関与していた。即ち腺腔侵襲を伴わずしかも病変の長さが、8.5mm以内の症例では、円切断端から病巣までの距離が3.1mm以内であっても遺残を認めない事が明らかとなった。4)円切断端に病変を認める症例では遺残(+)の症例が、75%であり、残り25%は遺残(-)であった。これら遺残(-)例を適確に選択する事は先に示した検討項目のみでは不可能であった。以上の成績より、円錐切除標本による残存子宮における病巣遺残を(-)と判定するための組織学的な基準は、病変進行度がIa以下であり、円切断端に病変を認めないこと。更に円切断端から病巣までの距離が3.1mmを超える症例では、頚管縦軸方向の病変の長さが8.5?以内であること。また、円切断端から病変までの距離が3.1mm以内の症例では、腺腔侵襲を伴わず頚管縦軸方向の病変の長さが8.5mm以内であること。という結論を得た。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1986-06-01
著者
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