胎児胎盤機能検査におけるDHAS負荷の臨床的意義に関する研究 : とくにDHASの胎児・胎盤系におけるestrogen代謝に及ぼす効果について
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概要
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Dehydroepiandrosterone-sulfate(DHAS)負荷時の胎児胎盤系におけるestrogen代謝に及ぼす影響を検討するために、妊娠末期正常妊婦および選択的帝王切開例を対象とし、DHAS100mg1回静注後の経時的母体静脈血(MV)、膀帯動脈血(UA)、膀帯静脈血(UV)および羊水(AF)中のunconjugatedestrone(E_1)、estradiol(E_2)、estriol(E_3)、estetrol(E_4)を測定し、以下の成績を得た。1.選択的帝王切開例のMV中のestrogen 4分画は、同一妊婦から経時的に連続採血して得られた成績と同一のパターンを示した。2.DHAS負荷後E1は、UV、UAで急増し、E_2はMVで急増し、胎盤でのE_1、E_2分泌について非対称的な分泌機構の存在することが示唆された。3.DHAS負荷後120分までにMV-UV間のE_2値について有意の相関性が認められ、E_2分泌について、向母体側、向胎児側に、一定の割合で分泌されることが示唆された。4.E_1については、DHAS負荷後MV-UV間に相関性が認められず、MV中E_1の上昇のピークはUVより少なくとも1時間遅延した。同一妊婦の連続採血による検討では、MV中のE_1+E_2濃度は30分より240分まで有意の変動を示さず、MV中E_1は急増するE_2よりの転換が大きな割合を占めることが示唆された。5.E_3については、母体側、胎児側とも著明な変動は認められなかつた。6.E_4はDHAS負荷後、MV、UV、UAで180-240分後まで増加する類似の変動を示した。DHAS負荷後、MV-UV間に有意の相関性が認められ、MV中E_4は、胎児胎盤系でのE_4生合成能を反映することが示唆された。以上、DHAS負荷後のestrogen 4分画は、それぞれ、胎児側、母体側で、異なった動態を示しestrogen分画間に向胎児側、向母体側といった強い特異性のあることが示された。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1986-05-01