Graphic Reconstructionによる子宮頚部上皮内癌の組織学的検討
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概要
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円錐切除標本の組織学的検索により上皮内癌と確定診断が下された症例より、可及的精密な病巣のgraphicreconstructionが可能な38例を厳選し各例につき詳細な模式図を作成した。それら病変域を主として組織学的構成の面から検討した結果、既に広く認容されている定説的見解とはいささか異なる成績を得たのでその要約を報告する。1.上皮内癌は表層上皮より発生する14例と頚管腺が発生母地である24例の2型に分けられ、それぞれ特有の病巣形状を示した。2.表層上皮より発生の上皮内癌は単峰状の病巣を形成した。病巣頂点を頚管側に置き、それより膣側に向う一方向性の成熟勾配が明らかなため、表層上皮内伸展は"後退り''様式を示し浸潤癌の発育様式とは本質的に異なっていた。3.表層上皮由来の上皮内癌の発育速度の判定には、異形成上皮様伸展面積と上皮内癌の修復上皮面積の2点が特に基準となつた。4.頚管腺域より発生する上皮内癌は表層上皮域に極めて不整な病巣を形成し、経時的多発と解される例が多かつた。5.上皮内癌の発生母地を頚管腺域とする根拠として、健常表層円柱上皮域下で腺置換巣を認めることは決して稀有でなく、また腺置換巣が表層上皮への上行性側方浸潤を高頻度に示す2点が重視された。6.頚管腺原発の上皮内癌が表層上皮に伸展すれば"後退り"様式の上皮内発育を示した。7.頚管腺域より発生した上皮内癌の発育速度は表層上皮の上皮内癌面積に比例した。8.全周性でかつ広汎な病巣面積を示す上皮内癌は発生母地を異にしても、緩慢発育型で上皮内癌期長期停滞型と解された。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1986-03-01