分娩発来に関する基礎的研究 : 羊水および胎児の分娩発来への関与
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概要
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早産治療の基礎となるべき分娩発来のメカニズムを解明する目的で、羊水と胎児が陣痛発来にどのようにかかわっているかをProstaglandins(PGs)産生系から検討した。羊水中phosphatidylinositol(PI)、羊水中phospholipaseC(PLaseC)活性、羊膜中PLaseC活性、新生児尿中PLaseC活性を測定し次の結果を得た。(1)羊水中PIは妊娠30週頃から増加しはじめ、妊娠36週ないし37週をピークとして以降漸減傾向にあつた。(2)羊水中にPLaseC活性を見出し、これを測定したところ、活性は妊娠30週以前ではほとんど認められないが、その後の妊娠経過とともに増加した。妊娠40週の活性を仮に100%とすると、妊娠19週では21.8%、32週では68.6%、36週では93.2%であり、妊娠36週頃までは増加する傾向にあるが、40週との間に大きな変化は見られなかつた。(3)羊膜組織の105,000×g上清分画でのPLaseC活性は羊水の約43倍であつた。(4)羊水中PLaseC活性の起源を胎児尿に求めて新生児尿を検索したところ、新生児尿にも強いPLaseC活性が認められた。正期羊水、羊膜、新生児尿におけるPLaseC活性を比較すると、羊水の活性に比べ羊膜ではその約43倍、新生児尿では約58倍であつた。(5)新生児尿中のPLaseCの分子量はおよそ33,000と推定された。(6)計算上、胎児尿中のPLaseCにより、羊水中に十分な量のアラキドソ酸が産生されていると考えられた。以上から、羊水中PIの減少はPGs産生のための消費によるものと考えられ、妊娠36週頃から羊水中で分娩発来への準備状態ともとれる変化が観察された。従って、胎児は肺からPIを羊水中へ分泌し、尿中にPLaseCを放出し羊水中でアラキドソ酸を産生することにより陣痛発来の一部に関与していると考えられた。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1986-03-01
著者
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