妊娠母体および担癌生体における血漿蛋白の動態
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概要
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妊娠と悪性腫瘍(腫瘍と略)とにおける生体の反応の異同を探ることは、妊娠や癌の仕組を知る一つのアプローチと考えられる。ここでは、血漿蛋白の動態を知る目的で、血液凝固第Vm因子、アンチトロンビンIII(ATIII)、第XII1因子、プラスミノゲソ、α_2-plasmininhibitor(α_2-PI)およびhistidine-richglycoprotein(HRG)、シアル酸、i?unosuppressiveacidicprotein(IAP)、cold-insolubleglobulin(CIG)の動態について検討し、次のような結果を得た。(1)第VIII因子活性:妊娠初期より漸増し、妊娠中期・後期で200%前後を示した。腫瘍でも、病期の進行にともない高値を示した。(2)ATm活性:妊娠初期でやや増加し、妊娠28週以後は、ほぼ正常値を示した。産褥3日目で低下し、1ヵ月目ではほぼ正常に回復した。腫瘍では末期例で低下した。(3)第XII1因子活性:妊娠初期より漸減し、妊娠中期・後期で50〜60%を示した。産褥3日目で回復傾向を示し、1ヵ月目では正常に回復した。腫瘍でも、病期の進行にともない漸減した。(4)プラスミノゲン活性:妊娠初期より漸増し、妊娠中期・後期で120〜130%を示した。産褥も高値を示した。腫瘍では一定の傾向はみられなかつた。(5)α_2-P1活性:妊娠初期にやや増加したが妊娠中期・後期では正常値を示した。産褥3日目で軽度増加し、1ヵ月目では正常に回復した。腫瘍では一定の傾向はみられなかったが、進行例で低下を示すものがあつた。(6)HRG:妊娠初期より漸減し、妊娠末期では46.5%まで低下した。産褥3日目で回復傾向にあり、1ヵ月目で正常に回復した。腫瘍では、病期の進行とともに減少し45.3〜67.9%まで低下した。(7)シアノレ酸:妊娠初期より漸増し、妊娠末期では63.8mg/dlを示した。産褥3日目で72.3mg/dlと高値を示し、1ヵ月目では正常に回復する傾向にあつた。腫瘍では、病期の進行とともに著増を示した。(8)IAP:妊娠中はほとんど変化しない。産褥3日目で325.6μg/m1と増加し、1ヵ月目では正常に回復した。腫瘍では、病期の進行とともに著増を示した。(9)CIG:妊娠・産褥ともに正常範囲にあった。腫瘍では、病期の進行につれて増加から減少にかわるという特異なパターンを示した。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1986-03-01
著者
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