31pWH-7 Senthil-Fisher 実験と Massless Vison
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概要
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1次元の電子系では、電子が持つスピンと電荷の自由度がそれぞれ朝永-Luttinger流体によって記述されることが知られている。これはスピン・電荷の分離と呼ばれている。Andersonは高温超伝導体の物理が、高次元におけるスピン・電荷分離の一般化によって記述されると予想した(高次元の朝永-Luttinger流体)。高次元における朝永-Luttinger流体へのアプローチとしては、スピン・電荷の自由度にスレーブ粒子を導入する方法がしばしば取られている。そこではヒルベルト空間を電子系と一致させるために、局所的な拘束条件が必要となるが、そのラグランジュ未定乗数として、ひとつのゲージ場が導入されることになる。このゲージ場は運動量項を持たない強結合極限にある。最近逆のアプローチとして、スピン・電荷分離を含めた"電子の分数化"が起きるとしたら、どのような条件が必要かが考察されている。そのなかでZ_2ゲージ対称性という構造が分数化において主要な役割を担っている可能性が指摘された。このゲージ対称性はスレーブ法のゲージ対称性とは異なり力学的に生成されるものである。この構造は、それまで知られていた実際に電子分数化が起きることが知られている2次元のSp(N)スピン模型のLargeN極限や、その後発見された厳密に分数化が起きることが示されたカゴメ格子上のスピン模型にもあてはまるため電子の分数化の普遍的な構造と考えられる。SenthilとFisherはZ_2対称性を持つ系における分数化を伴う相においてZ_2磁束を持つ励起(Vison)がギャップを持つことから、超伝導転移を挟むアハラノフーボーム実験に対して明瞭な実験的な帰結を持つと論じた。Senthil-Fisherが提案した実験は実際にBonnらによって実行されたが、結果は否定的でVison励起の質量に対して強い上限がつくことになった。現在スピン-電荷分離という着想が高温超伝導体に対する妥当性に疑問が持たれているが、我々はVison励起がギャップレスであるという可能性について検討した。そのためZ_2ゲージ対称性を持つ理論に対して双対な関係にあるp波超伝導相を持つ大域的なZ_2対称性を持つ系を考察し、その系を変形することでd波超伝導を示しVisonがギャップレスになることがわかった。それは相としては実現せず量子臨界点となる。最近高温超伝導体においてd波超伝導相間の量子臨界点の実験的証拠がいくつかある。それが上の量子臨界点と同じ普遍性を持つかどうかは今のところわかっていないが、量子臨界的なd波超伝導性のひとつの模型として興味深いと思われる。
- 2003-03-06
著者
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