ヒト血漿中黄体化ホルモン分子種の生物学的免疫学的特性に関する研究
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概要
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ヒト黄体化ホルモン(hLH)を等電点電気泳動法(IEF)を用いて複数のsubpopulation(分子種)に分画し,その生物学的免疫学的特性を検索することによりhLHの生合成〜分泌過程における分子修飾を追求した.正常月経周期の卵胞期前期,後期および黄体期において,合成LH-RH500μgを2時間にわたり点滴静注し,前後5時間の持続採血を行い血中bioactiveおよびimmunoreactive hLHを測定した.各周期とも血中LHは点滴開始直後より上昇し一時的なplateau(分泌第?相)を形成した後,開始120分頃より再上昇(第?相)し,以後漸減した.第?,?相の血漿をIEF(pHrange3.5〜10)を用いて分画し,各分画中のLHを測定した.各周期および?,?相間において量的差異はあるが,血中LHはA(pl:9.03±0.11),B(8.60±0.10),C(8.12±0.13),D(7.67±0.09),E(7.24±0.10)及びF(酸性LH)の六つの分子種に分画された.これらA〜Fの生物免疫活性比(B/Iratio)はA:1.12,B:2.09,C:2.21,D:1.87,E:1.29,F:0.49であった.分泌第?,?相間での各LH分子種の量的変動について検討したところ,全例第?相での酸性LHの有意な増加を認めた.最も多量に存在するのは中アルカリ性LHである分子種B,C,Dであった.一方卵胞期後期第1相では他周期1相と比較して強アルカリ性LH(A)が増加していた.第?相はLH分泌細胞中に既に貯留されていたreleasable LHの,第?相は新たに生合成された,あるいは2nd pool LHの分泌により形成されると考えられている.今回の成績とこの仮説より以下の事が推察できる.(1)新しく生合成されたLHは酸性域にpIを有しその生物活性は低い.(2)中アルカリ性LHは最も多量に存在し最も高いLH活性をとる.すなわち完成されたLHと思われる.(3)合成貯臓は旺盛だが未だ分泌の少ない卵胞期後期?相で生物活性のやや低い強アルカリ性LHが増加する事よりこれはover-maturationの状態にあると考えられる.以上のごとく異なったp1値を有する複数のhLH分子種はhLH分子の成熟段階を反映している事が示唆される.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1985-05-01
著者
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