妊婦の母体循環動態に関する研究 : とくに母体循環の母児間相関について
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概要
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子宮内胎児発育には種々の要因が関与し,その一因子として妊婦の心機能の関与が考えられる.妊娠中の心機能を心エコー図法より得られた心抽出量(C0)並びに心係数(CI)の妊娠時推移から検討を試み,その成績と出生体重よりみた胎児発育との関連を検討した.出生体重の分類として,Lubchenco曲線により75percentileを越えるものをHFD,25〜75percentileをAFD,25percentile以下をLFDと略称して以下に示した.対象は全妊娠期間および産褥1ヵ月にわたり経時的に継続観察し得た妊産褥婦とした.1)正常妊産褥婦(n=48)の妊娠および産褥期のCO,CIの推移は,各症例共に共通した変動を示した.すなわち妊娠24〜31週に最高値となり,以後漸減した.産褥5日目には,妊娠32〜40週とほぼ同値のCO,CIを認め,産褥1ヵ月には妊娠早期と同値となった.2)HFD死出産群(n=8),AFD死出産群(n=30),LFD死出産群(n=10)のC0,CIを比較検討した.a)LFD死出産群とAFD死出産群とでは前老に全妊娠期間にわたるCO,CIの低値を認め,とくに妊娠24〜31週および妊娠32〜40週で両群の間に有意差(p<0.05)を認めた.b)AFD死出産群とHFD死出産群とでは全妊娠期間にわたりCO,CIの高値傾向をみるが,推計学上有意差は認めなかった.3)非妊娠時に相当すると考えられる産褥1ヵ月を基準とした妊娠中のCO,CIの最高値との増加率と出生体重との相関は,CO増加率ではr=0.56(p<0.05),CI増加率ではr=0.54(p<0.05)と有意の相関を認めた.4)胎盤重量と出生体重との相関では,r=0.54(p<0.05)と有意の相関を認めた.また前述のCO増加率,CI増加率と胎盤重量との相関では,CO増加率でr=0.40(p<0.05)CI増加率でr=0.38(p<0.05)と有意の相関を認めた.以上から,正常妊娠において妊婦の循環動態が胎児発育に影響をおよぽしてくることが考えられ,妊婦のCO並びにCIの推移は胎児発育の一指標にたることが示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1984-05-01
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