子宮頚癌根治手術後に発生する尿路感染の成因とその予防に関する研究
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概要
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子宮頚癌術後膀胱機能が回復するまで恥骨上膀胱瘻を造設,排尿時経尿道操作を一切行うことなく管理した症例について尿路感染の基礎的検討を行い,その予防法を考察した.(1)術後1週間持続吸引施行中は有意細菌尿の出現を全く認めなかったが,術後7日より自尿を開始すると術後4週までに22例中14例(63.6%)に有意細菌尿を認めた.経日的に尿と尿道内粘液の細菌培養を行いえた9症例ではそのうち7例が術後7-14日の間に尿道内粘液から検出された細菌と同一菌種の細菌をその翌日の尿中に検出した.(2)尿道及び腔前庭部の細菌数と細菌種の経日的変化はほぼ一致した.また術後7-14日の尿道内細菌種は尿検出細菌種と一致してグラム陰性桿菌(GNR)が主であるが,15日以後はグラム陽性球菌(GPC)の出現頻度が増加し,終には術前の細菌叢と一致するようにたった.(3)術直後から膣前庭部洗滌を行い尿路感染の発生率は低下したが、非洗滌群との間に有意差を認めなかった.(4)術後2週目に抗菌剤を7日間投与した10例では術後4週目までに有意細菌尿を2例に認めたが,尿,尿道及び膣前庭部の経日的細菌検索により経尿道感染は否定しえた.(5)退院後の有意細菌尿の頻度は経尿道処置群が21.1%であったのに比して,恥骨上膀胱瘻管理群では9.4%で,両群間に有意差を認めた.以上より広汎性子宮全摘術後の尿路感染の予防には,術後早期には細菌が自然排尿後経尿道的に膀胱内に進入すること,及び尿道,膀胱粘膜の細菌抵抗性が減弱することに対する配慮が必要であり,またこの予防によって退院後の尿路感染の発生をも著明に低下させうることが判明した.
- 1982-12-01