羊水中のcortisol,tetrahydrocortisoneおよびestriol,estetrol濃度とその臨床的意義
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概要
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妊娠後半期における羊水中steroid濃度の測定が, 果して, 胎児の生活態様や病態を知るための手段の一つとなるか否かを検討するため, 一連のglucocorticoidsとestrogensを測定して, 以下の成績を収めた.1.羊水中estriol(E_3), estetrol(E_4)濃度は, 非抱合型(unconjugate, U), 抱合型(total, T)のいずれも妊娠36〜40週で著増し, 殊にT・E_3, U.・E_4は膀帯動脈血のそれを凌駕し(p<0.01), T/U比率は前者が8, 後者が2となつた.また羊水中ではT・E_3とU・E_3との間に一定の相関性があり(r=0.97), E_4にそれがなく, 一方, 膀帯動脈血濃度とはいずれも相関性が高い.2.羊水中cortisol(F)濃度の増加は, 非抱合型(U・F), 抱合型(sulfate, S・F)のいずれも36〜40週で著しく, 殊に後者は膳帯動脈血のそれより有意の高値となる(p<0.01).一方, tetrahydro-cortisone(THE), -cortisol(THF)濃度は妊娠29〜35週で著明に増加し, 36〜40週のそれと相違がなかつた.また, 膀帯動肝血と羊水とのTHE濃度は一定の相関性があり(r=0.73), S.Fにそれがなかつた.3.妊娠中毒症, 糖尿病合併妊娠では, T・E_3, S・Fの両者が正常妊娠の下限値(平均一標準偏差)より低下し、T・E_4, THEにそれを認めなかつた.重症型Rh不適合妊娠では, T・E_3, T・E_4およびS・Fはいずれもその絶対値が著しい低下を示すばかりでなく, 妊娠経過に伴う増量もなく, THE, THFは正常妊娠のそれより高値を示した.したがつて, 妊娠後半期における羊水中steroidのうち, T・E_3, S・FおよびTHEの3者は病態によつて特異な動態を示しているため, 胎児の生活態様とhigh risk病態に関連し, これを反映するものと考える.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1981-08-01
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