胎児・新生児の血中16α-hydroxy steroids動態に関する研究
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概要
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一般に胎児・新生児16α-hydroxylase活性は高く,そのため一連の16α-hydroxy steroidsが大量に生成され特異な動態を示すものとされている.そこでそれらsteroids(ST)の血中濃度を測定して以下の成績を得た.1)正常分娩時における16α-hydroxy dehydroepiandrosterone(16αOH-DHA),-pregnenolone(16αOH-Preg),-progesterone(16αOH-prog)各々の非抱合型,抱合型濃度を比較すると,臍帯血濃度はいずれも母体血のそれに比べて有意に高く,その傾向は抱合型でさらに著しい.また臍帯動・静脈血間では16αOH-Pregは前者で,160H-Progは後者で高く,16αOH-DHAに有意の相違を認め難い.一方両者間で16αOH-Pregに相関性はなく,非抱合型,抱合型16αOH-Prog,抱合型16αOH-DHAにそれがあり,さらに動脈血16αOH-Pregと静脈血16αOH-Progとの間に一定の相関性を認めた.したがって16αOH-DHA,16α0H-Pregはともに胎児由来のものとたり,16αOH-DHAは一定の濃度平衡を維持して臍帯血を循環することになる.2)新生児期における3者の濃度推移は特異的であり,いずれも日令第5目に至るもなお比較的高濃度であり,とりわけ抱合型16αOH-Pregは児娩出15時問後にピークとなり,しかも全期間を通じて新生児末梢血濃度が臍帯血のそれに比し常に高値を示した.従つて出生後1週間以内の新生児においては16α-hydroxylase活性が高く,副腎性前駆物質を速やかに転換する能力があることになる.また低体重児の16αOH-Preg濃度は臍帯血,日令第5日に至る末梢血のいずれにおいても正常児のそれに比べて高値を示すが,16αOH-Prog,16αOH-DHAでは有意の相違を認め難い.しかも16αOH-Preg,16αOH-Prog濃度はいずれもaldosterone,K^+濃度の推移に類似し,従つて新生児のnatriuretic作用にはこれからの両STも亦与る可能性があるものと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1980-05-01
著者
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