Hysteroscopyによる機能性子宮出血の診断学的意義
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概要
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子宮腔内の病変に由来する不正出血はきわめて多くその臨床診断はかなり難しいことも多かった,だが,hysteroscopy の利用により,器質性か機能性かの病態診断も容易になり,さらに個々の症例についてのかなり詳細な組織構築をも推測できるようになってきた(Sugimoto 1978)機能性出血についてもhysteroscopyと組織診との所見の対比によって,hysteroscopyによる臨床病態分類が行なわれ,即刻,的確な治療への試行がなされてきた.著者は不正出血500例に対するhysteroscopy診断から,器質性疾患などを除外した機能性出血367例(66.2%)について臨床的諸問題について検討した.hysteroscopyには子宮腔拡張に用いられる媒体によりgas hysteroscopyとwater hysteroscopyがあるが,両者についての優劣の比較はこれまでなされていなっかった.Hysteroscopyの中でも特に出血病巣の観察は難しい為,診断の確実を記するため機能性出血,特に増殖性子宮内膜からの出血例50例を選んでCO_29生理食塩液,高粘=デキストラン液を用いたhysteroscopyを行い,両側卵管口の可視度を指標にしても,その優劣の比較検討した.その結果,生理食塩液とデキトラン液の併用が血液除去や,子宮腔拡張に最も適していると判定し,すべての症例がこの方法によって検査された.Hysteroscopyにより機能性出血と診断された367例は引き続いて,遺残内膜を狙ってひと掻き掻爬により組織を採取して検鏡した.両者の所見に一致をみたのは367例中334例(91%)であった.また組織構成にのっとって表5の様な方法で80例について検査後ただちに治療を開始したが,65例(81.3%)の有効例を認めた.Hysteroscopyによる機能性出血の病態の把握は子宮内膜の剥脱の状態,遺残,再生内膜の表面所見の特異性および出血の様式などからほぼ正確行われることが分かった.その結果か機能性出血を含めた不正子宮出血の治療方針をただちに確率できるということは,重要な診断学的意義を有するものと考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1980-02-01