胎児のアミノ酸代謝の特異性に関する研究 : 時にアンモニアを中心とした代謝調節について
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概要
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胎内発育障害(IUGR)は心身障害児発生との関連が強調され,その胎内治療法の確立は臨床的課題の1つである.著者はこの臨床的問題ととり組む為には,胎児代謝の特異性を明らかにすることが急務と考え,主として,細胞レベルにおけるアミノ酸代謝の基礎的検討を行なった. 1)ラット胎仔肝GDHは胎齢とともに上昇し,胎生末期の胎齢20日目には,前日の約1.4倍の0.41±0.08unit/mg・protein. 胎齢21日目には,0.54±0.15unit/mg・proteinと急激な比活性の上昇がみられた. 2)成熟ラット肝GDH比活性は,0.24±0.09unit/mg・proteinと胎齢17日目,18日目の胎仔肝GDH比活性とほぼ同じレベルであることより胎生末期の胎仔肝GDH比活性は非常に高値であることを認めた. 3)ロイシン,イソロイシン,バリンのいわゆる分岐鎖アミノ酸がGDHのactivatorであることを認めた. 特に胎仔肝では成熟ラットの約2倍も活性が上昇することが判明した. 4)分岐鎖アミノ酸の活性化作用はintactなミトコンドリアの状態の時であることが判明した. 5)肝組織中の遊離アミノ酸分析により, 胎仔肝では分岐鎖アミノ酸が高濃度に含まれていた. 6)胎仔肝グルタミン合成酵素活性はGDHと同じく胎齢とともに上昇するが,成熟ラットの約1/3であった.ラット胎仔の成長発育過程におけるアミノ酸代謝について,アンモニアの代謝調節の観点から検討した結果,成熟ラットとは大いに異なり,成長発育に合目的な胎仔独自の代謝調節が営まれていることを想定した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1980-11-01
著者
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