各種妊娠の中絶後にみられるトロホブラストのviabilityの消長について
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概要
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胎盤トロホブラストの消滅を,それが分泌するhCG値から判定し,妊娠終了後に続発する絨毛癌の予防の可能性について検討した.尿中hCG値のLHレベルヘの下降は,必ずしもトロホブラストの完全消滅を意味するものでは扱いが,臨床的に充分役立つ指標として観察した.人工流産2,433例,自然流産695例,満期産1,724例,胞状奇胎43例について,妊娠終了後経時的に尿中hCG値を測定した.そのLHレベルヘの下降率から,次の諸点を指摘できた.(1)奇胎は,流産や満期分娩に比し,妊娠中絶後屈申hCG値のLHレベルヘの低下が最も遅く,5ヶ月の時点でなお症例の0.7%が異常値を示した.(2)非奇胎妊娠では,人工流産,自然流産,満期分娩の順にLHレベルヘの下降が遅延した.人工流産では流産術後1ヵ月の時点で96.3%・4ヵ月99.96%の下降率であった,このように,1ヵ月を過ぎても少数例ながらhCG高値を示すものがみられた.(3)自然流産では,掻爬術後2ヵ月目に0.7%(5例/695例),3ヵ月目になお1例がLHレベルを越す値を示した.(4)満期分娩では,1カ月で95.7%(1,653例/1,724例),4カ月で99.7%(1,718例/1,724例)がLHレベルを示したが,この時点でもなおLHレベルに下降しない症例のあることが判明した.(5)妊娠週数別にみると人工流産,自然流産とも,妊娠週数の少ないものは進んだものより,LHレベルへの下降が遅延した.(6)一度びLHレベルに低下した流産,奇胎の何れの症例からも,破壊奇胎の続発はみられなかった.(7)今回観察した総ての症例は,最短3年,最長8年の観察期間に,1例の絨毛癌も続発しなかった.また,絨毛の形態学的所見は,尿中hCG値の多少を反映した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1980-10-01