産痛の神経支配に関する臨床研究
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概要
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初産婦11名に高位分節硬膜外麻酔(Th_<12>-L_1)と低位腰部硬膜外麻酔(L_4-_L_5)のdouble catheter法による麻酔分娩を行い,産痛の神経支配と子宮の知覚神経支配について臨床的に追求した.硬麻針の穿刺角度及び皮膚一硬膜外腔までの垂直距離はTh_<12>-L_1で76°±12°,4±0.5cmm,又L_4-L_5で82°,±8°,4,5±0.5cmであった.分娩第一期はTh_<12>-L_1のカテーテルを用い,子宮口開大4.6±1.2cmで麻酔を始め,0.5%マーカイソ5mIを注入した.その後は産痛の出現を待って同剤を5mlずつ注入した.初回注入時の局麻剤有効時間は1時間57分±34分であった.また,これにより得られた麻酔範囲はTh_<9.4>-L_<1.6>であった.この麻酔で8cm開大まで全例無痛であり,全開大まで無痛であったもの7例(64%),8cm開大以後有痛のもの4例(36%)であった.ただしこの4例は児頭の下降が著しく,全開大前に膣,会陰部の圧迫伸展痛をS_<2,3,4>の部位に訴えたものである.Th<10>の範囲の麻酔で第一期の産痛が除去できることから,この時期の産痛の知覚神経はTh<10>-L_1の範囲の後根に入ることになり,従来から我国で云われている仙髄性知覚神経の関与はあり得ないことが判明した.このことより,分娩第一期の陣痛が主に子宮頚管開大と子宮収縮であることから,子宮頚部と子宮本体の知覚神経もまたTh<10>-L_1の範囲の後根に入り,仙髄性知覚神経支配はないことが推論される.第二期の産通はTh<10>-L_1とS<2,3,4>の範囲に認められ,L<4>-L<5>のカテーテルから0.25%マーカイン10mlを使用して全例無痛が得られた.以上の結論として,1)産通の神経支配は,第一期Th<10>-L_1,第二期,およびS<2,3,4>であり,この範囲の麻酔で無痛分娩が可能である.2)子宮本体,子宮頚部共に子宮頚部Th<10>-L_1の範囲の後根に入り,仙髄とは無関係である.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1980-01-01
著者
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