周生期における肺成熟に関する生化学的研究特に肺の隣脂質の変動について
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概要
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周生期における肺surfactantの動態について動物実験を行ない,胎任期から新生任期への移行,すなわち肺呼吸確立過程でのsurfactantの意義について考察を加えた.なおsurfactant markerとして総燐脂質total phospholipid phosphorus(TPP)及びlecithinを測定し,それぞれの脂肪酸構成についても検討した.その結果次の如き成績が得られた.1)肺組織のTTP、lecithinは胎生期より出生及び出生直後にかけて急増し,出生後1日目にピークとなり、その後次第に下降する傾向がみられ,生後5日目に最低値をとり,以後は徐々に増加して成熟ラットの値に近づいた.この変動のバターンは総燐脂質,lecithinとも同様であった.2)lethicinの脂肪酸構成ではパルミチン酸が最も多く,胎令21日目では,61.6%を占め,これが生後1日目には64%,さらに生後3日目には68%と増加したが以後はやや減少する傾向が見られた.lecithinのβ位脂肪酸では,パルミチン酸は胎令21日目及び生後1日目に45%を占めたが,生後3日目には50%と増加し以後はやや減少しながら成熟ラットのレベルに達した.3)胎生期では肺組織中の燐脂質の量的な増加は質的な増加と一致するが,新生仔早期ではその増減は一致せず時期的なずれがみられる.以上の成績により,分娩を契機として肺燐脂質はsurfactant物質として肺胞腔へ急激に分泌されるとともに,一方では肺surfactantの合成が急増する.そして新生児(仔)早期では肺surfactantの合成及び消費が活発でturn overが胎生期より速いのではないかと推測される.これらの事実は胎児(仔)の肺成熟や新生児(仔)早期における呼吸機能の確率といった修正期における適応現象を表現しているものと考えられる.また肺燐脂質の変動からみた場合,ラットでも呼吸機能が安定するのは生後5日目前後と考えられ,これはヒトにおける臨床的経過とよく一致する.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1979-04-01
著者
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