経膣分娩における血液凝固線溶系に関する研究
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概要
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経睦分娩の妊産,産褥婦について出血量500ml以下の正常群と出血量500ml以上の出血群の血液凝固線溶系およびインヒビター系の動態を明らかにしそれぞれを比較検討することは,分娩時および産褥期の出血傾向もしくは血管内凝固病態を知る上で臨床上重要な意義があると考え,本研究を行なった.対象および方法は,正常群(55例)と出血群(54例)に分け,それぞれ妊娠末期または不規則陣痛時(前値とする),分娩第I,II期,分娩後20分,産褥3,6,12,24,48時間の計9回肘静脈より経時的に採血し実験の資料とした.測定項目は,PTT,PT.TT,PRT血小板敷Fbg,eugLA,eug+SKLA(Std&Htd),SFMC,FDP,AT-III,α_1-AT,α_2-Mなどである.成績は,血小板数については,正常群は産褥6時間に,出血群は産褥3, 6時間に減少,Fbgは,両群ともに分娩後20分まで増加し,正常群では3時間より12時間までに,出血群では産褥3時間にそれぞれ前値に回復し,出血群のみ6時間に著しい減少を示し,12時間に回復した.eug LA は,両群ともに産褥より12時間まで著しく拡大した.FDPは,両群ともにI期より24時間まで増加し,正常群では産褥6時間に,出血群では産褥3時間を頂点とする山型パターンを示した.AT-IIIは,正常群では産褥3時間,出血群では分娩後20分に減少を示した.α_1-AT は,正常群では前値を含め前経過にわたり増加,出血群ではII期まで増加していた.α_2-Mは,正常群では産褥3時間まで増加していたが,出血群ではII期を頂点とし,産褥3時間にて前値に復し,その後は幻想した.以上の成績は,正常群に比べて出血群は,分娩後に血小板数とFbg量の減少,ELAやFDP の増加,AT-IIIの速やかな減少,軽度のanti-plasmin の増加傾向などの経時的変動があり,この現象は,過凝固に伴う二次線溶亢進を示唆しており,この凝血学的パターンは,出血量をさらに増加せしめる一つの原因になることが考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1979-12-01
著者
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