妊娠中毒症における線溶系の臨床的意義に関する研究 : 尿中plasmin活性を中心として
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概要
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妊娠中毒症の線溶動態把握のため,種々の型の妊娠中毒症の妊娠,分娩,産褥期における尿中plasminの経時的変化と尿中plasminogen+plasmin(U-PLS)の生化学的性状を検索した.方法.尿中Plasmin活性測定:lysine Sepharose affinity chromatography-radioc牟seinolytic methodを使用.U-PLSの分析:antiplasmingen sepharose affinity chromatogmphyでU-PLSを抽出し,免疫電気泳動,分離寒天電気泳動,gel filtation,SDS-gel電気泳動を観察した.その結果I)尿中plasminが糸球体内線溶の良い指標となり,その妊娠,分娩,産褥期の値は(i)正常妊娠(80例)では妊娠32週から週数とともに増加傾向を示し,分娩後4時間で最高となり,産褥4日で旧に復した.(ii)重症妊娠中毒症で分娩後急速に改善した4例(severe A群)と妊娠中毒症後遺症を残した3例(severe B群)では共に妊娠26週まで一時やや高値を示した.その後症状が重症になるにつれて尿中plasmin 値の低下が著明となり,妊娠38週では正常値以下になるが,分娩後,severe A群は正常妊娠より非常に高値(p<0.01)をとるのに比べ,sever B群は正常妊娠と有意差がなかった.(iv)子癇(3例),早剥(4例)によるDICでは発症後24時間までは異常高値を示した.II)U-PLS の分析より(i)慢性系球体腎炎,重症妊娠中毒症の妊娠中のU-PLS は略々分子量110×10^3であり,大部分はplasminogen とその重合体であった.(ii)DIC では低分子のplasmin (分子量25×10^3〜68×10^3)が多く,Severe A群の分娩後のU-PLSと類似していた.腺溶能活性にはこの分子量のPlasmin の関与が大きいと思われる.III)妊娠中毒症の発症に腎系球体レベルの線溶能が深い関係をもち,尿中plasmin 測定によって,その部の凝固能と腺溶能の均衡を判定すれば妊娠中毒症の早期発見,治療時期,方法を知る手がかりが得られることが明らかとなった.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1979-12-01