絨毛性疾患患者の血清hCGと脳脊髄液hCG値の動態について
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概要
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早期発見が難しく,致命的となる確率の高い絨毛上皮腫の脳転移の早期診断の一助のために,正常と異常妊娠時,および絨毛性疾患患者血清と脳脊髄液についてのhCG値をhCG-β-subunit RIA系により測定した結果は次の通りである.1)先ず正常月経周期婦人5例について尿中hCG(LH)レベルをHARにより測定したが,ことに排卵期に80IU/l-120IU/lとピークを示した.しかレ血清hCG値は8mIU/ml以下となり全周期を通じて検出不能であった.すなわちhCG-β-subunitRIA系の測定ではLHレベルでの交叉反応を否定出来る.2)次に正常妊娠157例の妊娠月数別の血清hCG値を測定したが妊娠第2月で49.6±11.OIU/mlとピークを示し,妊娠第4月で下降し,妊娠末期に向ってやや増量傾向を示した.これに対し脳脊髄液hCG 値は血清値より低いが妊娠第4月でで600.7±149.7mIU/ml とピークに達し以後次第に下降し,妊娠末期にやや増量した.3)そのため正常妊娠時の血清および脳脊髄液hCG値の比は,妊娠第2月で128.52±13.22:1とピークを示し,以後中期まで次第に下降し,妊娠第10月で54.5±3.59:1となる.4)次に子宮外妊娠11例の血清および脳脊髄液hCG値は正常妊娠時に比してはるかに低く,ことにその両者の比は60.3±4.1:1 を示した.5)胞状奇胎9例の血清hCG値は極めて高値を示したが脳脊髄液hCG値もまた高値を示し,従って両者のhCG値比は約380.0:1となる.しかし部分奇胎例ではその比は41.0:1と低値を示した.これに対し奇胎後follow-up 中の8例の血清および脳脊髄液hCG値も低く,その両者比は46.9:1を示した.6)破壊奇胎進展の4例では,血清hCG値および脳脊髄液値も上昇しその比は147.6:1を示した.7)絨毛上皮腫5例の血清および脳脊髄液hCG値の比は,非転移例では313.8:1を示したのに対し脳転移の2例は23.0:1,20.9:1を示し,血清と脳脊髄液値hCG値比が非常に近接する.以上から絨腫脳転移の早期診断には血清と脳脊髄液のhCG-β-subunit RIA系測定によるhCG値比が有用であると考える.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1979-12-01