妊娠血中Estrogen/Dehydroepiandrosterone-Sulfate比に関する研究
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概要
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正常妊娠120例,切迫流産32例,妊娠中毒症19例,予定日超過妊娠12例の血中Es,並びにDHEA-SをRIA法により測定し,胎盤aromatization能の示標となると思われるEs/DHEA-S比を求め次の成績を得た. 1) 正常妊娠の血中Esは妊娠第12週ごろより増量し,妊娠第14週以後は末期までかなり急速に増加する(妊娠10ヵ月29.4±9.0ng/ml).血中DHEA-Sは妊娠中期でやや低値を示すが,有意の増減傾向はみられなかつた(72.8±27.5〜56.3±17.5μg/dl).Es/DHEA-S比は血中Esの経過とほぼ同様で,妊娠第10週ごろより妊娠末期まで増大する(妊娠10ヵ月5.2±2.3). 2) 児体重と血中Es及びEs/DHEA-S比はそれぞれγ=0.458>及びγ=0.465>で相関関係がみられた.胎盤実質質量と血中Esとは相関がなかつたが(γ=0.154<Es/DHEA-S比との間にはγ=0.296>で相関関係がみられた. 3) 切迫流産例について予後良好群と不良群とに分けて検すると,妊娠第10週未満例では両群とも血中Es, Es/DHEA-S比はいずれも正常範囲内にあつた.妊娠第10週以後では予後良好群の血中Es,Es/DHEA-S比は正常妊娠範囲内にあつたが,予後不良群は正常妊娠群の下限以下を示すものが多く,逆の血中Es 2ng/ml以下でEs/DHEA-S比0.2以下の例の予後は極めて悪く.これ以上の例では予後が良好であつた.予後不良群では絨毛aromatization能の低下が示唆される. 4) 妊娠中毒症例については,重症度により血中Es値及びEs/DHEA-S比が異なり,妊娠第33週以後の軽症例では血中Es, Es/DHEA-S比はいずれも正常範囲かそれ以上にあるが,平均値も正常妊娠群よりやや高いのに対し,重症例では両値とも正常妊娠群の下限以下を示すものが多く,平均値も正常妊娠例より有意に低く,かつ,胎児発育や予後の不良のものが多かつた. 5) 予定日超過妊娠では血中Es値よりみて,Es高値群とEs低値群の2つに大別され,Es/DHEA-S比もEs高値群では総て正常範囲かそれ以上であるのに対し,Es低値群では大多数が正常下限以下の低値を示した.かつ,低値群では比較的低体重児及び難産率も高かつた.本症の予後判定法として,血中Es並びにEs/DHEA-S比測定の意義が示唆される.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1976-03-01
著者
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