子宮頚癌早期診断における子宮頚部腺口分類の意義
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
徳島大学医学部附属病院産科婦人科学教室癌クリニックで腟拡大鏡診 (コルポスコピー) を行った401例を対象として先に著者らが1969年に発表した子宮頚部腺口分類法の頚癌早期診断における意義について改めて臨床的検討を実施した. 腺口像V型 (明瞭な充実性の微小白斑状の小点) のみられた症例の83%, 腺口像IV型 (太く鮮明で境界も明瞭な多くは隆起を伴う白い輪状のもの) の症例の75%が組織診て上皮内癌または浸潤癌の所見を示し, 同様に腺口像III型 (やや太いが不鮮明で境界も不明瞭な隆起を伴わない白い輪状のもの) の25%に, また腺口像II型 (細い白い輪状のもの) の9%, 腺口像I型 (全く異常所見のみられないもの) の15%に上皮内癌および浸潤癌が認められた. また組織学的に上皮内癌または浸潤癌と診断されたもののうちでV型またはIV型のみられた症例群では89%までが上皮内癌と微小浸潤癌で残り11%が深部浸潤癌であった. 言いかえると上皮内癌ではV型およびIV型に属するものが64%あり, 微小浸潤癌では53%が, 深部浸潤癌では17%がそれぞれV型かIV型に分類され, 浸潤が進むにつれてV型またはIV型のみられる率が低くなることを示した. また手術不能癌あるいは高年令のため放射線治療をうけた症例群では全例に腺口はみられなかった. また従来のコルポスコピーの所見で異常上皮所見の trias とも言われている白斑, 基底, 分野などが全く認められないものでV型およびIV型の腺口像を呈したものが11例あったがもしも腺口の所見に十分注意が払われなかったならばこの種の症例は見逃される可能性が極めて高かったといわねばならない. 他方細胞診との関係でも7例の細胞診偽陰性のもののなかに腺口像V型あるいはIV型を示したものが見られ, 子宮頚癌早期診断上腺口の所見とその分類は臨床的に極めて意義の深いものであることを明らかにした.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1974-07-01