超音波断層法による骨盤縦径計測法に関する研究
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概要
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児頭骨盤不均衡 (CPD) 診断には, 現在までX線撮影による骨盤計測法がもつとも広く研究され, 普及も進んでいる. 一方新しい生体映像法としての超音波診断法は, 軟部組織の分析能力および距離方向の計測精度のよさで知られている. その産科領域への応用に胎児頭大横径計測法があるが, 専ら胎児発育度判定に利用されている. 臨床的観点からはCPD診断への応用も当然考えられるところである. そのためには大横径値と対応する骨盤諸径線値の計測が必要となる. 今回, 超音波断層法により骨盤縦径の通過面を描写し, 得られた断層像から骨盤縦径最短距離の計測を試みた. 基礎的検討として, (1) Aモード法単独使用, (2) 単一走査と残光型ブラウン管表示を用いた超音波断層法, (3) 反覆走査と蓄積型ブラウン管表示を用いた超音波断層法の3種類の診断装置で骨盤計測を試みた. 検討の結果, (3)の診断装置を用いた場合に骨盤縦径の計測に適した骨盤縦断像の描写が可能であった. この装置はKDK超音波断層診断装置UV-503型で使用周波数 2 MHz, 探触子は直径15mmのものを用いた. 対象は妊娠末期の30例についてであり, この超音波計測値をX線計測値(Guthmann法)および帝王切開時の実測値と比較検討した. その結果は, 超音波計測値の平均値および標準偏差はそれぞれ, 12.36cm, ±1.12cm, X線計測値では12.45cm, ±0.87cm, 実測値では12.36cm, ±1.03cmであった. また超音波計測値(y)と実測値(x)との標本相関係数r=0.931, 回帰直線y=1.01x-0.11, X線計測値(y)と実測値(x)では, r=0.802, y=0.68x+4.1, X線計測値(y)と超音波計測値(x)ではr=0.803, y=0.62x+4.7であった. この結果三者の計測値のうち超音波計測値と実測値の相関関係がもつとも良く, 回帰直線勾配も1.01と理論値1に近く, 超音波計測値がX線計測値よりも実測値に近いことが明らかとなった. 今後CPD診断のスクリーニング法としての利用が期待できる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1974-11-01