HL-A 抗原からみた習慣性流産の研究
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概要
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父方の遺伝子を受けつぐことによって, 初めて正常妊娠がはじまると考えれば, 胎盤の胎児部分と胎児そのものは母体からみれば同種移植片 Allograft とみなすことが出来る. しかし, 正常な条件のもとでは妊娠を通じて免疫学的破壊をまぬがれているが, 病的状態では母体と胎児の間では生物学的反応がおきている可能性が考えられる. 著者は習慣性流産患者における夫婦間の組織適合性を HL-A 抗原の立場から Lymphocytotoxicity test を用いて検索した. (1) 正常妊孕群における Major % incompatible の平均値と標準偏差は 4.1±3.0% であり, 適合性を示した, Minor % incompatible の平均値と標準偏差は 4.3±4.7% であった. (2) 流産群の Major % incompatible の平均値と標準偏差は 12.1±7.4% と高値を示し, 非適合性を示した. Minor % incompatible の平均値と標準偏差は 3.9±4.0% であった. 又, Major % incompatible を正常妊孕群と流産群との間で有意差検定の結果, 5%の危険率で有意差 (t=3.61) を認めた. (3) 正常妊孕群では見られずに流産群に見られるものは, HL-A3, 7, 8, 6b であり, 特に HL-A 3, 7, 6b が著しい高値を示している. (4) 流産回数が多くなるにつれ Major % incompatible は高値を示す傾向がみられた. 以上の結果から原因不明とされている流産の中には, 夫婦間の組織適合性抗原の差異から母児間で何らかの抗原抗体反応が起り流産を招来されうることを推察した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1974-10-01
著者
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