妊娠時における血小板減少性紫斑病に関する研究 -実験的血小板減少症を中心として-
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概要
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血小板減少性紫斑病は, さほど稀な疾患ではないにもかかわらず, 妊娠時にこの疾患が合併したという症例の報告はきわめて少ない, この点に着目した著者は, モルモットを用いて実験的に血小板減少症を惹起せしめ, 妊娠時と非妊娠時におけるその影響の差を比較し, さらに血液学的に若干の実験を行ない, 次の結果を得た. まず, 抗モルモット血小板家兎血清を作成し, これを妊娠モルモット群と非妊モルモット群に感作させたところ, 両群ともに強い血小板減少が認められたが, その減少率において, 両群の間に有意の差は認められなかった. しかし, 皮膚および腹腔漿膜における出血の程度は, 妊娠群では非妊群に比し明らかに軽微であった. この原因をつきとめるべく, 妊娠群と非妊群における抗血清感作前の血液性状および血管透過性を比較したところ, 血液性状には有意の差は認められなかったが, 微小血管透過性に関しては, 妊娠群では非妊群に比し明らかな低下が認められた. 以上の結果から, 妊娠時では血小板数の減少がかなり強くても出血斑として発現しにくく, この機序の一端に微小血管透過性の低下が関与しているものと推論した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1974-10-01