絨毛性腫瘍の転移病態についての免疫学的知見
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概要
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部分的な同種移植腫瘍と見做される絨毛性腫瘍のことに転移病態について免疫学的な検討を加えた結果は次の通りである. 1)54例の絨毛性腫瘍患者夫妻の血液型分布は同型あるいは適合型を示したのは67.2%であり, そのうち転移例は非転移例に比してとくに適合例が多く見られた. 2)さらに絨毛性腫瘍患者夫妻のリンパ球適合性をみるためにLymphocytotoxicity testを28組の夫妻について行なつたところ, 正常, 奇胎, 破奇例に比して絨腫転移例ではリンパ球抗原においても高度の適合性を示した. 3)破奇, 絨腫患者に対する夫皮膚移植の生着期間は正常および奇胎患者に比して著しく延長(20日以上)したが, 絨腫転移死亡例では30日の延長を示した. 一方治癒例のそれは11.1日であつた. さらに移植後3日目の患者血清中に抗夫皮膚抗体を少量ながら認めた. また妊娠時により, およびMTX投与によりマウスへの移植皮膚片は多少生着延長を示したが, 本腫瘍患者における抗癌剤と夫皮膚生着期間の延長との間には関連性が少ないように見受けられた. 4)正常妊娠各月における末梢血中リンパ球数は, 非妊時に比して必ずしも減少を示さなかつたが, 本腫瘍転移例では血中リンパ球数はHCG値の動きと逆関係にあり, また病状の悪化とともにその数を減じその際の深部リンパ節も細胞配分の著明な減少を示した. 5)腫瘍巣に対するリンパ球を主とする細胞反応は, 破奇子宮筋層内侵入部では非転移群では全例に見られたが転移群では認め難い例に予後不良例があつた. 一方絨腫肺転移24例の転移巣周辺の細胞反応は剖検肺ではこれを欠くか, 軽度であつたのに比してMTX, Act-D, 投与による5例の剔出肺転移巣では中等度から高度の円形細胞浸潤を認めた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1971-04-01