子宮頚部上皮内癌の組織学的診断基準の検討 : follow-up studyによる検討
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概要
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当教室クリニークにおいて, 細胞診, 腟拡大鏡診, 狙い組織診の綜合診で発見された所謂上皮内癌91例を研究対象とした. 上皮内癌carcinoma in situ(以下CISと略す)の診断基準を明確にすることを目的としてCISの診断において, より重要と考えた層形成の欠如, 細胞異型の2所見に, つぎに重要と考えた極性の喪失, 異常核分割の2所見を加えて, この4項目に注目し, その程度の強弱に応じてscoreを与える方法を試みた. score7点以下をCIS-A, score8点以上をCIS-Bと2群に分類したうえで, 4カ月から4年10カ月にわたつて症例をfollow-upし, その病変の推移を検討してつぎの知見をえた. (1)著者がCIS-Aと分類した45例のfollow-upの結果は, 病変消失18例(40.0%), 病変存続20例(44.4%), 浸潤癌への移行7例(15.6%)で, この病変はまだ浸潤への必然性を具えていない. 癌に前駆する良性病変であると考えられる. (2)CIS-Bと分類した46例については, 病変消失1例(2.2%), 病変存続20例(43.4%), 浸潤癌への移行25例(54.4%)で, この病変こそ悪性性格を保持する, 非可逆的な病変, すなわち真の上皮内癌である. (3)follow-up studyにおいて細胞診を反復すると, Papanicolaouの分類のIV, Vすなわち陽性が出現する頻度は, 病変が消失した群では存続群, 癌への移行群に比べて著しく低く, 反復する細胞診て病変の消失はかなり予測できる. (4)腟拡大鏡診の所見のみで病変の推移を知ることはできないが, 病変の拡大, 増悪を看視し適確な組織採取の個所と時期を知るために腟拡大鏡診は上皮内癌の診断およびfollow-up studyにきわめて有用で不可欠の補助的診断法である.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1971-02-01
著者
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