ヒト胎児副腎のステロイド代謝に関する組織化学的, 生化学的研究
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概要
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ヒト胎児副腎のステロイド生成代謝の実態を知ることは, 胎児胎盤系におけるステロイドの生成代謝を解明するうえに重要である. よつてヒト胎児副腎40例を用いてこれを組織化学的または生化学的に検討して, 次の成績をおさめることができた. 1. 組織化学的に胎児副腎皮質の3β-ol-dehydrogenase活性は, 胎令23週頃より発現するが, definitive cortexに存在してfetal cortexにはないこと, またその後増強することを認めた. またこの酵素活性は基質によつてその活性の強弱を異にしDHA>21-OH pregnenolone>17-α-OH pregnenolone>pregnenoloneの順となる. 2. 生化学的な酵素レベルにおいてもpregnenoloneよりcortisol, corticosteroneへの転換が認められたが, その転換率は低く, cortisolへのそれが0.01%〜0.03%, corticosteroneへのそれが0.03%〜0.04%であることを認めた. したがつてヒト胎児副腎皮質における3β-ol-dehydrogenaseが存在することを生化学的にも証明されたが, その活性は低いといえる. 3. pregnenoloneより16α-OH pregnenoloneへの転換を認めた. またその転換率は0.302%であつた. 4. progesteroneよりcortisol, corticosteroneへの転換を認めた. しかし, その転換率は低く, cortisolへ0.02〜0.07%, corticosteroneへ0.0374〜0.04%であつた. 5. progesteroneより16α-OH pregesteroneへの転換経路と, その転換率が0.36%であることを認めた. 6. 11β-ol-dehydrogenase及び17β-ol-dehydrogenase活性は, 胎令29週より認められるが, その活性は極めて弱く, 主としてfetal cortexに限局している. 以上の成績よりヒト胎児副腎皮質においては3β-ol-dehydrogenaseをはじめとするcorticoidsの生成系酵素を有するものとみなされるが, その活性は弱く, しかもin uteroの状態ではある種の抑制因子も関与して, その活性が抑制されると推定せざるをえない. 他方estriolの生成系酵素に属する16α-hydroxylaseは, その活性値が比較的高いので, この生成系機能は亢進しているものとみなされる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1971-11-01
著者
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