人の子宮頚癌組織より分離された新株細胞について 特に新株細胞の細胞起原とその性格について
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概要
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岡山大学医学部産婦人科教室において, 1963年2月19日に, 小川一三は人子宮頚癌より仮称岡大株(以下OGと称す)を分離株化に成功したが, 光学顕微鏡による細胞の形態と染色体の異型の点以外には本細胞が上皮性腫瘍性性格をもつという確証は得られていなかった. 著者はOGの細胞起原を明らかにするために, HeLa細胞(以下HeLaと称す)およびL細胞(以下Lと称す)を対照として次のような比較検討を行なった. 即ち, 細胞の好銀線維形成能と貪喰能, Hamster Cheek Pouch 内への細胞移植による腫瘍の形成とその組織所見, 電子顕微鏡による細胞所見, および細胞の酵素活性について検討した. 1 OGは HeLa と同様にLと異なり好銀線維形成能を欠除した. 2 OGは HeLa と同様にLよりも鉄コロイド貪喰能がきわめて低かった. 3 OGの Hamster Cheek Pouch 内移植により形成された腫瘤の病理組織学的形態は上皮性腫瘍の性格を示した. 4 培養管内で増殖したOGと Hamster Cheek Pouch 内に移植したOGについて, 電子顕微鏡を用い Desmosome の存在を明らかにした. 5 解燐系酵素の活性はOGが HeLa より低かったが, 脱水素系酵素の活性は両者に差がなかった. 6 LDH Isozyme については, OG はLD_1 の分画において HeLa より約12%少なかった. 以上の結果より, 岡大株細胞は日本人子宮須癌組織の癌細胞に起原をおく細胞であることが確認された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1970-02-01