人絨毛性gonadotropin (HCG) の産生部位に関する形態学的研究
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概要
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胎盤内におけるHCGの産生部位については, 従来より種々の検索が行なわれており, その産生部位をLanghans (L) 細胞ないしcytotrophoblast (CT) に求めるものが多い. ところが近年, HCGの免疫学的研究がさかんになり, 螢光抗体法を応用してHCG産生細胞同定の試みがなされつつあり, また電顕的観察も行なわれている. 著者は, 螢光抗体法の他に2, 3の方法を併用してHCG産生細胞の同定を試み, 次のような結果を得た. 1. HCGの主成分の1つと考えられるglycoprotein及び細胞内RNAは, ともに妊娠初期絨毛, 胞状奇胎 (胞奇) 及び絨毛上皮腫 (絨腫) のSyncytium (S) 細胞に, 最も豊富に分布している. 2. 螢光抗体法によれば, 特異螢光はS細胞に最も強く, 次いで羊膜上皮 (Am) 細胞にも存在しその他の部位にはほとんど認められない. すなわち, このことはS細胞及びAm細胞にはHCGが存在することを示すものである. 3. Am細胞に局在するHCGは, 基底絨毛膜より羊膜腔へ向って通過する際に, 一時貯溜されたもの, 或いは羊水中のHCGが逆に吸収されたものであろうと考えられる. 4. 電顕的にはS細胞に粗面小胞体などの蛋白合成に関与する細胞内小器管の発達が著明であるが, L細胞及びAm細胞ではこれらの発達が乏しい. 5. 上記の観察所見を併せ考えると, S細胞においてHCGの産生が行なわれているものと推定される.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-04-01