蛋白同化ホルモン投与による新生児の体重増加因子に関する検討
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概要
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近年蛋白同化ホルモン(以下蛋同ホと略)が盛んに使用されるようになつて来たが, 新生児, 特に未熟児の成長促進に利用されるにしたがつて, この種ホルモン投与による蛋白蓄積すなわちN平衡への影響と水貯溜との関係が重要視されるに至つた. 今日蛋同ホ投与による蛋白蓄積は常識となつているが, 新生児に投与した場合, 体重の増加のすべてが蛋白の蓄積と考えることに危険性はないだろうか. そこで新生児に蛋同ホを投与するにあたり体重増加に如何なる因子が関与しているかを探求した. マウス, 犬仔ならびに新生児に蛋同ホを長期間投与し, 体重増減の経過とN出納, Na, K, Clなどの電解質出納を観察の主体とし, 血清蛋白, エネルギー代謝および尿量をその補助手段として検討を加え, 次のような結果をえた. 1. 蛋同ホ投与による動物実験では, わずかながらも水貯溜のあることを実証した. 2. 臨床実験では, 蛋同ホ投与により対照にくらべ生理的体重減少率が少くなり, 生時体重復故日数は短縮し, その後の体重増加率は日を追つて大となつた. またN蓄積率は増加し, 体重復故後においては更に大となるが, 4週間以上の長期間投与ではWearing off effectがあらわれる. したがつてN蓄積量よりAlbright係数によつてえた計算体重を実測体重は遥かにこえるようになる. 3. 実測体重と計算体重との差は何によつておこつているかを検討するための実験では, 動物投与実験によつて水貯溜によることが推定できた. また血中電解質には有意の差がみられなかつたが, 尿中電解質の1日排泄量は減少しているので, その電解質の媒体としての水貯溜が考えられた. 次にガス代謝および血中リポ蛋白質の測定によつては, 脂質と糖質は燃焼して蛋白質同化へのエネルギーを供給していると考えられ, 体重増加の直接原因となつているとは考えられなかつた. 更に尿量および尿量%の減少傾向がみられるので, 計算体重を上まわる実測体重の増加の主要因子として水貯溜が考えられた. このような傾向は成熟児よりも未熟児において著明であり, 新生児に蛋同ホを投与し, その体重増加をもつて本剤の効果すなわち成長の尺度とするのは危険であつて, 常に水貯溜による体重増加を考慮し, その効果判定には慎重でなければならない.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1966-03-01