原因不明不妊症婦人における頚管粘液の免疫学的研究
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概要
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原因不明不妊症婦人(A群)と正常婦人(B群)における頚管粘液の生理学的,病理学的な免疫学的検討を行なった.得られた結論は以下の如くである.1.頚管粘液抽出液においてIgGは全例に,IgAは85%以上の症例に測定され,平均量は前者で15〜45mg/dl,後者は5〜7mg/dl程度であった.これらの頚管粘液中濃度は血清の2〜4%量であった.2.A群における平均IgG値,平均IgA値はB群のそれらより高かった(p<0.01).3.IgMはA群のごく一部の例に認められたに過ぎない.4.Secretory IgAは全例に検出され,平均量は13.0〜24.0mg/dlと多量であり,生理学的に重要であることが示唆された.5.補体活性は全例に認められ,多くは1〜3単位であった.A群でやや高い補体活性を示すものが多かった.6.C_3 PAは全体例の30%程度に検出されたのに比し,C_4は1例に検出されたのみであった.このことは,頚管粘液ではclassical pathwayよりむしろalternative pathwayが生理的に重要であろうと考えられた.7.頚管粘液抽出液・精子凝集試験において,凝集能25%以上を陽性とすると,A群では14.8%に陽性であり,B群では全例に陰性であった.頚管粘液抽出液・精子不動化試験において,比較検体より20%以上低い精子運動率を示すとき陽性とすると,A群では20.5%に,B群では5.5%に陽性であった.以上のことより,これまでの血清を主とする研究が免疫の関与する不妊症の存在を示唆してきたが,頚管粘液を中心とした著者の本研究結果は,頚管粘液は精子と免疫学的に反応しうるに足る各種条件を備えていることを明らかにした.そして原因不明不妊症婦人のなかには精子に対する局所免疫反応が頚管粘液レベルでも認められることを支持した.
- 1983-04-01
著者
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