婦人科悪性腫瘍患者血中α_1酸性糖蛋白の等電点電気泳動法による分析
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概要
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婦人科悪性腫瘍患者を対象としその血液中のα_1酸性糖蛋白(α_1-acid glycoprotein α_1-AG)の経時的変化を一次元免疫拡散法により定量測定しかつ等電点電気泳動法を用い分析し悪性腫瘍の診断,予後判定,再発の診断における有用性について検討した.A.定量 1.正常健康婦人62.2±2.7mg/dl 2.子宮良性腫瘍57.7土4.9mg/dl卵巣良性腫瘍66.9±8.9mg/dlであり手術後1〜2週目をピークに増加した後暫減した.3.子宮頚部癌T_068.8±14.2mg/dl,T_1 79.7±10.4mg/dl,T_2 102.1±21.2mg/dl,T_<3-4> 111.8±29.1mg/dlを示しT_0では正常健康婦人値とは有意差を認めないがT_1では有意の差(p<O.01)をもって高値を示し癌の進行と共に増加する傾向が認められた.手術後経過良好例では1〜2週目をピークに増加の後暫減したがT_1の1年後にても正常健康婦人値より有意の差(p<0.01)をもって高値を示した.手術後経過不良例では1〜2週目の増加のピークの後減少を認めたいか又は暫減を認めた後再増加し再発診断時167.2±46.4mg/dlと高値を示した.4.卵巣癌では手術前144.9±36.6mg/dlと著増を認め手術後は子宮頚部癌と同様の経過をたどるが卵巣癌の場合暫減速度が早く又再発診断時220.0±45.8mg/dlと高値を認めた.以上よりα_1AG定量は悪性腫瘍の診断,予後判定,再発の診断に有用であった.B.等電点電気泳動pH3.1〜pH3.5にクマシーブリリアントブルーR250陽性の9本のバンドを認め陽極側より順に分画I,II……,VIII,IXとしさらに5つにグループ化し検討した.1.正常健康婦人では分画I,IXを認めずグループ(IV,V,IX)で65.5±4.9%を示した.2.子宮頚部癌では癌の進行に伴いグループ(I,II),(VIII,IX)比率の増加及びグループ(IV,V,VI)比率の低下が認められ卵巣癌にても同様であり手術後共に時間の経過にしたがい正常健康婦人パターンに復帰する傾向が認められるが経過不良例ではその復帰傾向が認められなかった.以上より悪性腫瘍の診断予後観察にパターン比の変化が有用であった.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1983-04-01