組織適合性抗原差の妊孕能に及ぼす影響
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概要
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Wistar系ラットをあらかじめ同系ラットの胎盤細胞,リンパ球にて能動免疫することにより,その後の妊娠における流死産率は,対照群の6%に比して各々22%,19%と有意に増加した.しかし異なる2系統間での交配において,組織適合抗原による前感作は,ラットにおいてもマウスにおいても流死産率に影響を与えなかった.ラットにおける主要組織適合抗原の異なる2系統間での異系交配では,同系交配と比べて,有意とはならなかったものの流死産率の低下傾向,及びlitter size,胎仔重量の有意の増加が認められた.したがって母児間の組織適合抗原の不適合は妊孕能にむしろ有利に働いていると考えられ,流産を免疫学的に解明するためには,従来の移植免疫学的なrejection reactionの観点だけではなく,facilitation reactionの観点からみることの重要性が示唆された.
- 1983-03-01