ラット子宮の交感神経支配 : とくに生後発育過程における神経分布密度とノルエピネフリン濃度の変化について
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概要
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子宮に関する自律神経系とくに交感神経終末の出生直後から成熟に至る発育過程と,その間のノルエピネフリン濃度の変化を追跡,検討し,子宮機能の成熟の一端を知ることを目的として研究を行った.ウィスター系ラット交配により出生直後,3日齢,5日齢,7日齢,14日齢,21日齢,28日齢,35目齢,42日齢,49日齢,成熟雌ラットとして70日齢,105日齢のものを用いた.蛍光組織化学法としては,Falck and Hillarp法を,ノルエピネフリン定量には,Keller et al.の法を用いた.ラット子宮における交感神経終末は,生後49日齢でadult levelに達していた.その分布は,子宮頚部に多く,体部に少なく,間質部に比較的多かった.一方short adrenergic ganglionic cellは,出生直後に子宮頚部旁結合織内ですでに観察できた.単位子宮湿重量あたりのノルエピネフリン量は,生後3日齢でpeakを示した.そして生後70日齢でadult levelとなった.これらの蛍光組織学的および生化学的な結果から,ラット子宮の交感神経終末は,生後49日齢から70日齢の間に成熟することがわかった.一方short adrenergic nervous systemは出生直後にできていた.以上の結果から,ラット子宮の交感神経系は,性成熟と平行して完成していくものであり,神経終末の分布状態から,精子の上昇,受精卵の輸送や分娩時の子宮収縮などの生殖生理に合目的的に関与していることが示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1983-03-01