卵巣癌において同時に高い発現を示す遺伝子の検討
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概要
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最近, cDNAアレイやSAGE(serial analysis of gene expression)を用い, 卵巣癌を含むさまざまな癌腫で遺伝子発現プロフィールの検索が盛んであるが, これらの方法で膨大な検体を用いた精度の高い定量的解析は困難であることもわかってきた.著者らは既に卵巣癌のSAGE解析で高発現を示した遺伝子を見出している.今回筆者らはさまざまな組織型の卵巣癌39症例検体をマイクロダイセクションし, リアルタイムRT-PCR法でそれらの遺伝子を含む13遺伝子の発現を定量解析し, 多変量解析を行った.コントロールとしてshort-term培養の正常卵巣上皮細胞, SV40で不死化した正常卵巣上皮細胞株と嚢胞性腺腫細胞株を用いている.解析した遺伝子はglutathione peroxidase 3(GPX3), apolipoprotein J/clusterin, insulin-like growth factor-binding protein 2, epithelial cell adhesion molecule/G733-2, Kop protease inhibitor, matrix gia protein, tissue inhibitor of metalloproteinase 3, folate receptor 1, S100A2, signal transducer and activator of transcription 1, secretory leukocyte protease inhibitor, apolipoprotein E, ceruloplasminであり, すべての遺伝子でコントロールより高い発現が認められた.中でも酸化ストレス反応に関与するGPX3遺伝子は淡明細胞癌で特に高い発現を示し, 淡明細胞癌のバイオマーカーとなる遺伝子である可能性が示唆された.さらにSTAT1, TIMP3などいくつかの遺伝子は卵巣癌の早期発見につながるターゲットとなる可能性も示唆された.これらの遺伝子発現パターンは年齢, 進行期またはK-ras遺伝子の変異とは相関関係はなかった.またいくつかの遺伝子は同時に高い発現を示し, 共通するシグナルパスウエイに関与する可能性やいくつかのシグナルパスウエイに関与してクロストークしている可能性が示唆された.これらのパスウエイから新しい治療法の開発に結びつく可能性が示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 2001-10-01
著者
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