妊娠および分娩時におけるTissue inhibitor of metalloproteinases(TIMP)動態の研究
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概要
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前期破水の機序の一つとして, 卵膜を構成するコラーゲンの変化が考えられている. matrix metalloproteinases (MMPs) のinhibitorとしてコラーゲン代謝に深く関与しているtissue inhibitor of metalloproteinases (TIMP)-1 (以下TIMPと略す) が, 妊娠時どのような動態を示し, また, 前期破水の機序にどう関わつているかを検討した. 1. 妊娠14・15週 (I群, n=122), 妊娠25・26週 (II群, n=186), 妊娠30・31週 (III群, n=196), 妊娠35・36週 (IV群, n=214) の血清TIMP濃度は, それぞれ, 150±32, 139±30, 145±26, 149±33ng/ml (Mean±SD以下同じ) であつた. I群, III群, IV群では, 健常非妊婦 (155±31ng/ml, n=112) と有意差を認めなかつた. II群の血清TIMP濃度は, I群およびIV群との間に有意 (p<0.05) な低下を認めた. 早産例 (n=4) および前期破水例 (n=9) では, いずれの症例においても, 血清TIMP濃度の推移に異常を認めなかつた. 2. 羊水中TIMP濃度は754±325ng/ml (n=26) と, 母体血清と比して著しい高値を示した. なお, 妊娠週数との間に相関を認めなかつた. 3. 分娩時において, 羊水中TIMP濃度 (775±312ng/ml, n=20) は, 母体血清 (155±21ng/ml, n=25) や臍帯静脈血清 (160±38ng/ml, n=18) に比して有意 (p<0.01) に高値を示した. しかし新生児の初回尿中にはTIMPは検出されなかつた. 4. 14例の卵膜において, 羊膜および絨毛膜組織中TIMP濃度は, それぞれ, 84±53, 48±22ng/mg proteinであつた. 在胎15週と21週の胎児皮膚と肺の組織中にはTIMPは検出されなかった. 5. 免疫組織化学的検討では, 羊膜上皮細胞, 羊膜線維芽細胞, 絨毛膜細胞および脱落膜層内の細胞にTIMPの局在を認めた. 以上の成績より, 羊水中TIMPは卵膜由来と考えられ, 卵膜組織に存在するTIMPがMMPs活性の調節を介して, 卵膜の脆弱化・破綻の防止に働いていることが示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1993-04-01
著者
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